東京高等裁判所 昭和32年(ラ)515号 決定
記録を調査するに、抗告会社は昭和三十二年五月二十九日東京地方裁判所に対し会社更生法第三十条にもとずき更生手続開始の申立をし、同庁昭和三十二年(ミ)第六号事件として繋属中、同年六月四日同裁判所は抗告人の申立により、同法第三十七条に則り、相手方が抗告会社の財産に対し既にした強制執行手続の中止を命ずる決定をしたが、その後同年八月九日さきにした中止決定を取り消す旨の決定をし、該決定正本は同年八月十五日抗告人に送達され、これに対し抗告人は同年八月二十一日本件抗告に及んだものであるという経過を認めることができる。よつて本件抗告の適否について考察するに、会社更生法第十一条においては、更生手続に関する裁判をなるべく迅速に確定せんことを期するため、これに対する不服申立の方法を即時抗告に限定し、しかもこの即時抗告の許されるのは「この法律に特別の規定がある場合」即ち同法第三十四条第三項、第三十九条第三項、第五十条、第二百三十七条、第二百七十一条第三項、第二百八十一条、第二百八十九条等の場合に限られ、これ等の場合以外には、即時抗告は勿論通常の抗告も許されないのである。尤も同法第八条によれば「更生手続に関しては、この法律に特別の規定がないときは、民事訴訟法を準用する」旨を規定するが、更生手続に関する裁判に対し不服申立をなし得る場合及びその方法を限定した前示規定はこの「特別の規定」に該当するから、この点に関する限り、「強制執行手続において口頭弁論を経ずしてなすことを得る裁判に対し即時抗告をなし得る」旨を定めた強制執行の通則規定たる民事訴訟法第五百五十八条の如きはその準用の余地なく、ただ同法第四百十九条の二の特別抗告及び第四百二十九条の再審抗告にあつてはその性質上例外として抗告が許されるものと解すべきである。
本件において原裁判所は前示経過の如く、抗告人の申立により、相手方から抗告会社財産に対し既になした強制執行手続の中止を命ずる決定をした後、さきになした中止決定を取り消す旨の決定をしたのであるが、右は会社更生法第三十七条第一項、第五項の規定に則り、裁判所においてさきの中止決定を維持する必要なしと認めて取り消したまでであつて、かかる強制執行中止の決定は勿論、これを取り消す決定に対し不服申立を許す特別の規定は存しないのであるから、右取消決定に対し単に抗告理由に記載する事由があるとして提起した本件抗告の不適法であることは明らかである。
(斎藤 坂本 小沢)